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明星山左岩稜

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大岩より展望台(左下)を望む。
    中央がキャンプ場

明星山左岩稜

2008年5月に訪れた際には小滝の五輪塔は無くなっており、婦人に尋ねたところ、新しい墓を建てると古い墓は地中に埋めるのが慣わしだと教えてくださったが・・・・・・・惜しい!
も一度拝ませて貰いたかったなあ
 
                   夕陽の衛兵


糸魚川にアプローチゼロのロングルートがあると宮本氏に聞きルート図を貰った。 明星山のマニフェスト5.10d 11P 355mとフリースピリッツ5.9 15P 500mだ、どちらもヨダレもののルートだが単独で登ると15時間程かかりそうでとても無理だから今回は7P 190m+上部70mの左岩稜にトライすることにしたが核心は5.12aなのでチョンボ棒と何でもありで悪あがきしてみようと思う。 


だめならエイドラインを登ればよい。 アブミが無くてもシュリンゲで代用できるだろう。 アブが多いので気をつけるようにと宮本先生が心配してくれたが小生、虫には滅法強い。 我が家には巣を作らずに走り回る黒褐色のクモが10匹ちかく同居していて、一番大きいのは赤ちゃんの手のひら程あって、動作が鈍いので踏まないように気をつけている。


ET顔のヤモリは家の周りに居て夜になると裏の窓ガラスにへばり付くが家の中にはあまり居ない。 どちらも無害なので可愛い。 たまに遊びに来るムカデは大きくて怖いが少しイジッてから外へ逃がすと来なくなる、ずっと以前は退治していたが親兄弟が探しにきて増えると誰かに聞いてからそうするようになった。 


毎年5月末には裏の山裾で蛍が10匹程生まれて隣家と行き来するが遠くへ行こうとしないのでこれも可愛い。この地の長老によると、ずっと昔我が庵と裏山の間が川だったそうで、その名残かもしれないが、そばの小川の蛍より小さくて別種のようだ。 
先日、垣根の刈り込みをしていて足長蜂の巣に気づかず数ヵ所刺されたが2日もすれば治るし毎年のことなので気にしない。 娘と息子も小さい頃からの付き合いなので気にしていないようだ。 そんな訳でアブぐらいなら、そうたいしたことは無いとタカをくくっていたのだが。
 



琵琶湖の西を通り8号線に出てチンタラ走り途中の街で花火を見たりしながら14時間かかって糸魚川に着いたら真夜中で、明星山の奥のキャンプ場に着くと真っ先にウルル(アブの一種)大量発生に注意!の看板が目に入ったが、その時は居なかったので気にせずに寝た。



翌朝目覚めるとウルルが車に体当たりの総攻撃を仕掛けてきた。 ハエぐらいの大きさだが何10匹も居て、凄まじい勢いで突っ込んで来るので車がポンポン鳴る。 ドアを開けた途端に5・6匹飛び込んできたが、吸血鬼も車の中では勝手が違うらしく窓にへばり付いて、わりとおとなしいので安心したら1ヵ所噛まれて血が滲んだ。 



展望台へ車を移動させると、ここにも伏兵が10数匹居た。 大きな動く物体に反応するようで人も車も別なく体当たりして来る。 車を離れると10匹近く追って来たので4・5匹叩き落すと居なくなったが、ここでも1ヵ所噛まれた。 



一段落して見上げる壁は80mぐらい下の川底からピークまで500mほどあるだろう。 目の前を覆い尽くしてしまう南壁の大迫力にたじろいだ。 この壁を単独で登ろうとする自分が馬鹿に思えてきた(実際そうなのだが) 頭痛がして足の関節が痛くなってきた。 防衛本能か?それとも只の風邪なのか?どっちにしても完全にビビッていた。 



とりあえず80mほど下の川底へ降りて行くが草むらで再び猛攻を受けた。 左岩稜の取り付きまで追って来て退治するのに結構時間がかかったが、奴らは集団でないと逃げてしまうことが分かって安心した。 血に飢えて岩に激突し、岩魚の餌になる馬鹿なウルルも小生も大した変わりはないようだ。 



取り付きでカブッた3P目の5・12aを眺めていたらリミッターがますます強くかかり体が動かなくなったので、岩に寝転んで岩魚を見たり壁を見たり1時間程ぼんやりして過ごした。 腹が空いてきたのと暇つぶしに車で10分程のコンビニに行き食料を調達した帰り姫川の土手で娘に、ビビッて登れないので待機している旨メールしたら、珍しく直ぐに返信のエールを送ってきた。 

明日ガンバッテ!とくればこのままスゴスゴ帰る訳にもいかず、川を眺めていたら泳ぎたくなり飛び込んだが、水が冷たくて上がった途端またもや10匹程の攻撃を受けた。 裸では守りきれず数ヵ所噛まれて体を拭く暇もなく服を着たら奴らは諦めて何処かへ消えた。 



今日は1日中ブラブラする事にして小滝の集落の土産物屋の奥さんに明星山の名の由来を尋ねたら、古老の人が訛ってみょうじと言ったのが伝わったのではないかとおっしゃった。 あの山は宵の明星の明星山ですとも・・ ガソリンスタンドの若者は、みようじ山なんて始めて聞いたと言う。 



話は変わるが少し離れた姫川の支流に小谷(オタリ)温泉があり、そこの女将さんに先年聞いた話によると、先住民のアイヌ語のオタリに漢字を当てはめたものだそうだが、後世いつかは訛りで済まされるかも知れない気がする。 しろうま岳の雪解けの馬型が代かき馬(田んぼの苗代をかきならす黒馬)なのに黒い代馬が白馬に変わり、今ではハクバが凌駕している様に由来も年月の流れの中に埋もれてしまうものなのかも知れない。
 



またまた話が変わりますが、小滝の古い墓に立派な五輪塔を見つけ、落ち武者伝説を直感。 有り得ない場所に有り得ない石塔を見るとつい詮索の虫が眠りから覚め囁きかけて止まないのです。
拝見した他の墓の雰囲気は年代を感じさせませんが、隠れるような集落の小さな棚田を見てついそう想ったのです ・・・ 宗旨からして “上杉の残留兵”何て事もあり得る訳ですが、残念ながら伝説は聞けませんでした。




一夜明けると頭痛も治まり体調も回復していたので左岩稜にトライしてみる事にした。 雲っているので楽だろう。 出だしの木にロープを括り小ハングを超えたら後は簡単だった。 それにしてもウルルが居なくて助かった。 2Pも優しかったが3P目のフェースがかなりカブッているのでエイドラインにシュリンゲの即席アブミを掛けてみたが登れなかった。 

仕方なく始めて体験するマルチピッチの5・12aにプリクリしてロープに頼りジワジワせり上がったが出口のピンが見えなくて行き詰まってしまった。 対岸のクラクションの音に振り返ると狭い道路に人だかりがしていた。 小生を見物しているのだ!こうなれば登るしかない!
急にやる気が出てきた。 



隣のエイドラインの残置の紐にようやくとどいたチョンボ棒でプリクリして横へ飛んだ! 紐が切れればギャラリーが喜ぶだろうからそれはそれでオイシイ。 カブッているので怪我の心配もなく思いっきりいけた。 極細の紐もこういう時は結構強い。 
後はCM宜しくファイト1発オーリャー!力任せにロープを手繰り余力を駆って一気にハングを乗り切った。 これでギャラリーも納得しただろうと思うと結構楽しかった。 でも展望台備え付けの望遠鏡でクライマーが見ていたら馬鹿にされるやろなあ。 



ポツリポツリと雨が降り始めたが展望台には屋根があるし,こっちもリミッターなどぶっ飛んで勢いづいている。 雨の方が涼しくていいなどと嘘吹きながら4Pの手強い筈のぬめった出だしを難無く越えた。 まるで甲子園初出場初優勝の球児のノリではないか!ここから先はズル無しのフリーで行こう。 小雨なので岩があまり濡れていないのはいいのだが湿ったロープでグリグリの滑りが悪すぎる。 濡れ過ぎると止まらないし加減が難しい。



5P・6Pと優しくて7Pでは雨も止み薄日が差してきた。 アリの様に小さくなった見物人の姿がまばらになって少し寂しかった。 残り大岩までの70〜80mは3級で傾斜も緩くフリーソロで登ったが大岩からの登りも結構怖かった。 その後の下降路に向う長いトラバースも落ちれば何百mで緊張の連続だったが急な尾根を2つ超えて小沢のブッシュに着いたら無事帰れる実感と充実感がジワジワと湧いてきた。
                                                                     

明星山P6南壁左岩稜 

2004 8/4〜6

ソロの巡礼

南壁下部

左岩稜取り付き

3Pの核心を振り返る

4P

5Pより小滝川上流を望む

明星山左岩稜